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久しぶりの小説うp。

本当に長らく放置で申し訳ありませんでした・・・!

内容としては、土方√沿いで鳥羽伏見直前の龍之介と山崎。
戦の兆候に焦る山崎と、そんな山崎に焦る龍之介の話です。

友情でごまかせるレベルですが、読む方によってはやっぱり腐に感じる方がいらっしゃるかもしれませんので、ご注意ください。

大丈夫な方は↓からどうぞ!





臆病者の夜






年末にみたその黒さは、けれど祝いの紋付きとは明らかに違っていた。
その黒は、不安を掻き立てる闇に似ている。
そんな不穏な装いの山崎の姿を見て、俺は何となく事を覚った。戸口に佇むそいつは、俺のそんな様子に困ったように笑う。けれど目を細め眉を顰めたその表情は、顔の大半を隠す布のせいでどこか泣いているようにも見えた。
俺も多分、似たような顔をしてるんだろう。こんな顔でぼんやり立っている俺たちが滑稽に感じられた。
外は雪がちらついている。半開きの板戸から吹き込む風が、足元をただ冷たく撫でていた。
 
「すまないな、いきなり来てしまって。忙しくはなかったか?」
囲炉裏の側に腰を下ろした山崎は、漸くといったようにそんな言葉を絞り出す。俺は小さく首を振った。別段忙しいわけではなかった。だからこそ松本先生も山崎と俺の邂逅を許してくれたんだろう。
俺の返事に山崎はほっと安堵した。
「良かった。迷惑ではないかと…。」
のろのろとした、意味をなさない会話。山崎には珍しいことだ。こいつはいつでもまず結論から話す。だから山崎自身きっと苛々してるんじゃないだろうか。せわしなく動く、俯いたままの目はどこか焦っているように見えた。
言いたいことを先延ばしにするような、いや、むしろ言いたいことを見つけかねているような。
そんな風な状況で俺の前に座るということは、異常だった。
『どうしたんだ』
俺の顔を見ようとしないそいつを見かねて、紙に書いた。山崎との会話で紙を使うのは久しぶりだ。こっちを見てくれないと何も伝えられない自分がすこしじれったかった。
文字を目にした山崎は、はっと息を呑む。自分が黙り込んでしまったことを恥じたのか、俺の唇を読もうとしなかったことを恥じたのか。はにかんだ顔は一瞬背けられ、迷うように俺を見た。
「井吹、君は知っているか…?今の、新選組の状況を。」
今度は俺が黙り込む番だった。
知らない訳じゃない。むしろ今の状況は嫌と言うほど感じていた。今年の年末がどこか気抜けしているように見えるのも気のせいではないだろう。
京の人々みんな、不安なのだ。先の見えない怖さを、ある人は憂い、ある人はやけくそに紛らわせ、前向きになっているひとも、いるんだろうか。ばらけた気持ちが、年末のめでたさを薄れさせていた。
「京はもうじき、戦になる。」
山崎の意を決した言葉が、俺を射抜いた。
やっぱりそうなのか。そうだとしたら、新選組は、山崎は、
薄々気づいていたのに、突きつけられるとやはり恐ろしくなる。
「だからもう、君には会えなくなるんだ。」
山崎が吐き出すように言った。その顔は強張っている。握り締めた手は小さく震えていた。
「ここにきて、こんな事を話して、それから何がしたいのか、何をして欲しいのか、なにも分からないままそれでも来てしまった俺を笑ってくれ。井吹、俺は戦から逃げたいわけではないんだ。なのに、戦の予感を感じた瞬間、無性に君に会いたくなった。俺は、自分のことがよく分からない…。」
こんな山崎を俺は初めて見た。いや、違う。一度だけ、一瞬だけ見た。
あの雨の中で、俺を追いかけていたときも、こいつはこんな顔をしていた。
『怖いのか』
動かした唇の動きを読み取った瞬間、山崎の表情が変わった。
「違う!俺は武士になるために新選組に入った…!局長や副長を勝利へ導くことが、俺の役目だ…!役目を果たすことが俺の喜びだ…!」
山崎は珍しく声を荒げた。その顔は、ひどく余裕がない。
「死ぬは怖くない、戦うのも、人を殺すのも怖くなどない…!だからわからないんだ・・・!」
冷静さを欠いた山崎が、痛々しかった。こいつはそういいながら、やっぱり怖がっている。今だって、目の奥が震えている。
こんなとき、声があったころなら俺は一緒になって声を荒げ喧嘩になっただろう。だが、今はそんな事はできない。俺は山崎の肩を掴んで少し荒っぽく揺さぶった。
落ち着けよ、冷静になれよ。そう呼びかけるようにじっと目を見つめる。山崎は驚いて目を瞬かせた。
『ちがう』
もう一度、言い聞かせるようにゆっくり口を動かす。
確かに山崎は、新選組のために戦うことに喜びを感じていた。それは嘘なんかじゃないだろう。こいつがこんなふうに恐れるのは、もっと違うことだ。
俺はちゃんと伝わるよう、さっきの紙に筆を走らせた。
『お前が怖いのは、戦のあとだろ』
山崎が、はっと息を呑む。
多分こいつは戦うことも、人を殺すことも、自分が死ぬ事さえ厭わないだろう。
『誰かが死んだりあったものが無くなったりなにかが変わるのは 俺だって怖い』
もしかしたらこの戦が終わった後、京は更地になっているかもしれない。もしかしたら、俺は知らない人間の中で生活しなくちゃいけないかもしれない。もしかしたら、大切な人を永遠に失うかも知れない。
多分山崎が恐れてるのも、そういうことなんじゃないだろうか。
山崎は少しの間唇を噛んで辛そうに俯いたままだったが、やがてふっと息を吐いた。
「そう、かもしれないな…。」
疲れた顔を隠すように、山崎が笑う。なんだかその顔は俺が知ってる山崎とは違う気がして、でも不思議と嫌な感じはしなかった。
「だが、それを認めるわけにはいかないんだ。新選組は、戦いの向こうを信じ義のため剣を振るわなければいけない。戦いのあとが怖いだなんて、俺の立場では口が裂けても言えない。」
山崎の体が小さく感じる。いや、俺がいつの間にか山崎の背を追い越してしまったんだ。嬉しい事なはずなのに、どっちの背が大きいか喧嘩した日々が懐かしくなる。
それにしても山崎は、こんなに小さかったのか。
「だからこそここに来たかったのかもしれないな。俺は本当に、ただの甘ったれだ。」
分かってる。こいつは孤独だったんだ。立場に呑まれて、新選組というお仕着せに着膨れして、身動きがとれなくなってしまった。弱音も不満も、こいつの中では禁句になってしまったんだ。
こいつが生きているのは、そういう場所なんだ。
俺は急に山崎がどうしようもなく可哀想になった。
「すまない、君にまでこんな迷惑をかけて。少し弱気になっていたようだ。」
いらない。そんな言葉はいらないんだ。だって今ここで案じられるべきは当のこいつなんだから。だからこいつはここに来たのに。
山崎の目はもう戸口に向かっている。帰るつもりなんだ。弱い所を俺に見せまいと。
でも、ここじゃなければどこで山崎は弱くなれるんだ?こいつはここを出てどこへ行くんだ。新選組に、戦に行くのに。
ここしかないじゃないか。
俺は立ち上がろうとした山崎の腕を掴んで引き止めた。
「井吹?」
山崎が振り返る。細い腕だ。こんな細い腕で、こいつは人を殺し、信念を守り、未来を作らなければならない。
なんて非道い現実なんだろう。
『 ここは 新選組じゃない 』
ゆっくりと口を動かした。強がるのは新選組での仕事だ。こんなところで強がってどうするんだよ。そういうことを伝えたかった。そしてその意図は幸いにも正しく山崎に伝わったらしい。
山崎は、目を見開いて、呼吸を止めて、それから、糸が切れたみたいに表情を変えた。その顔は迷子が母親を見つけたときみたいな、そんな顔だ。
「やめてくれ、そんな風に…」
言いながらも、山崎の声はもう半分泣いていた。俺自身も、鼻の奥がつんとしてくる。
お互いに泣きそうな顔を見るのがつらくて、俺達はどちらからともなく背中に腕を回しお互いを抱きしめた。山崎の暖かさとすこし早まった脈が伝わってくる。この温もりは、もうすく消えてしまうかもしれない。そう思うと怖くて、やっぱり涙が出てきた。山崎が漠然と感じていた不安や恐怖って、きっとこういう事だと思う。
山崎の吐息を耳で感じながら、俺はただこの時間が終わらないよう願うだけだった。












*************
この話は、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、年末に書いていたものです。
しかし、途中の「山崎が本当は何を恐れているのか」が自分自身分からず途中で放棄していました。
最近またこの小説を見つけてきて、案外放置していたせいかその「山崎の気持ち」が分かるようになっていてちょっと嬉しく感じたりしています。
山崎は史実では30越えてたりしますが、私の予想としては龍之介と会ったとき23くらいかなと思っています。どっちにしろ龍之介は山崎よりたぶん年下。山崎はもう背なんて伸びないし、龍之介は16歳の育ち盛りなのでぐんぐん背が伸びます。そのうち山崎は龍之介にがっつり身長を越されてしまうでしょう。なんだかそれがものすごく・・・こう・・・萌える。


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PC、イラスト、読書、ゲーム、小説執筆など
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薄桜鬼、BASARAを主食として時に雑食。
ついった https://twitter.com/#!/kawazu84
ピクシブ http://www.pixiv.net/member.php?id=1406302
ついったには鍵がかかってますが、リアルの知り合いにばれないためなので報告していただければこちらからもリフォローするとおもいます。
読み方はよく間違われますが「かえる」ではなく「かわず」です。
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